大腸菌形質転換のヒートショック/回復培養の検証
大腸菌の形質転換は、ケミカルなものだと下記が標準的でしょうか。
だいたい1時間半くらいを要する。
コンピテントセルと、プラスミドを混ぜて氷中で30分、ヒートショック42度で1分、その後に氷上で2分静置、SOC培地を加えて、37度で1時間程度の回復培養を行い、プレートに播種する。
原理も曖昧なために、本当に1時間半も必要なのか?という疑問がわいてくる。
1996年に、5分でできる論文が発表されている。
コンピテントセルとプラスミドを混ぜて氷上で5分、37度で温めておいたプレートに播種する。
High efficiency 5 min transformation of Escherichia coli.
2016年にも、氷上で5minもいらない上、プレートを温める必要もない、という論文も出ている。
Impact of heat shock step on bacterial transformation efficiency
ここまで言われているのだったら、いざ試してみようといろいろ試してみた。
コンピテントセルとしては、東洋紡のDH5alphaと、タカラバイオのJM109を利用したが、どちらも大差はなかった。利用したプラスミドは下記。
1)pETDuet-1 :抗生物質はカルベ二シリン(終濃度50 ug/mL)
2)pACYCDuet-1:抗生物質はクロラムフェニコール(終濃度25 ug/mL)
3)pRSFDuet-1 :抗生物質はカナマイシン(終濃度25 ug/mL)
4)pCOLADuet-1:抗生物質はカナマイシン(終濃度25 ug/mL)
5)pCDFDuet-1 :抗生物質はストレプトマイシン(終濃度10 ug/mL)
1)pETDuet-1
ヒートショックも、回復培養も不要。
2)pACYCDuet-1
ヒートショックは不要、回復培養は必要でLB, SOCで差なし。
15 minの回復培養では1桁~2桁程度、効率が低下するの。
30 min程度するのがベターだと思われる。
3)pRSFDuet-1
ヒートショックは不要、回復培養は不要。
カナマイシン50 ug/mLにすると、回復培養は必要。
4)pCOLADuet-1
ヒートショックは不要、回復培養はカナマイシン25 ug/mLでも必要。
5)pCDFDuet-1
ヒートショックは不要、回復培養は必要。
以上のような結果でした。
このあたりを、プラスミド増幅機構や薬剤耐性機構を合わせてシミュレートできると面白そうだけどなあ、と思ったりする。
もう一つの形質転換法である、エレクトロポレーションについても、キュベットとかコンピテントセルを氷上で用意するのが一般的かと思いますが、室温の方が効率が上がるそうですね。
まだ比較はきちんとできていませんが、いずれ。